19.08.07
記憶の断片へ[雑感]
友人たちが日本へ帰っていったのと同時に、数日来の湿気もどこかへ消えた。
日差しの中に居ても、時折吹く風を冷たく感じるようになった。空は東京に比べるとずっと広く、
軒を連ねるアパートの屋根に切りとられたような、くっきりした輪郭を感じるくらいだ。
なんだかこの空気はあの時に似ていると思う…今年もそうやって夏の終わりを感じる。
普段毎日を過ごしているとついついやり過ごす風景が急にいとおしく、何かとても貴重なものの
様に見えるのは、この「日常」の終わり・断絶を明瞭に意識したからなのだろう。
同じ季節、同じ風景に出会うことはもうないのかも知れないという気持ちが、わたしを空の色、
風の香り、街角の音へと向けさせる。感覚がそれらを懸命にとらえようとする。
またいつか同じように、この瞬間を「あの時」として再現するために。
人についてもそれは同様で、ずっと続くと思っていた関係に断絶の気配を感じた時、その感覚は
急に鋭敏さを増す。視線の動き、ちょっとした一言、些細な仕草ですら決して見逃す事はしない。
その人と共有した時間空間…そのすべてを記憶に刻むために。
そしていつかその人を「あの人」として再現するために。
この場所を離れることが、それへの準備とは思わない。
けれども脳裏の片隅からは一瞬たりとも離れることはない、別れの予感。
…はっはっは。それにしてもやや感傷が過ぎたようだ。
