19.05.06
行ってはいけない場所がある?![ベルリン・ドイツの話題,雑感]
先日、政府の元報道官ハイエ氏がW杯期間中やってくる旅行者について、ラジオでこんなことを
言った。
「ブランデンブルク州や他の中小都市の中には、肌の色の違う人が立ち入るのを避けた方が良い
所がある。(もし立ち入れば)生きてかえってこられないこともありうる」
この発言に対して、当然さまざまな方面から反応はあったものの、真っ向から否定する声は少ない
…そんな空気が今のドイツにはある。
ベルリンから程近いポツダムで、2人組のドイツ人が黒人男性に重傷を負わせるという事件が発生
したのはイースターの頃。被害者の男性はドイツ国籍をもっており、長年ポツダムで生活をし、
一時はドイツ人女性と結婚、彼女との間には子供もいたという。
襲撃の際、被害者は携帯電話で元妻に助けを求めた。残念ながら彼女は応答せず留守番電話へ
繋がったが、そこに襲撃の様子が録音されていた。「このクソ黒人!」公開された音声に、人々は
ショックを受けた。あまりにあからさまな差別の言葉に、「犯人はネオナチ系」との推測が。
これに異を唱えた政治家もいたが、かえって反発を招くという事態に陥った。
被害者は襲撃時に受けたダメージがひどく昏睡状態。彼のプロフィールが明るみになり、周囲の
人々が彼の人となりについて語る。「いつも明るくて、気の良い奴だった」「また一緒にサッカーを
したい」…そして新聞・雑誌は書く。「彼だってドイツ人なのに。ただ肌の色が違うだけなのに」。
間もなく2人の若者が容疑者として身柄を拘束されたが、二人ともネオナチの熱心な活動家という
わけでもなく、外国人に対する敵意が直接原因になったとは言いがたい。
当時被害者は相当酔っていたとの報道もあり、逮捕された2人のドイツ人との間で揉め事が起き、
それがエスカレートしたのではないか、との見方もある。
見え隠れするのは「よそ者」に対する感情。澱のように溜まった苛立ちと戸惑いは、何かがあると
爆発する。そしてそれは普段都会にいると、いろんなものに隠されて見えない。
ドイツ人にとっては普通の場所でも、外国人にはそぐわない場所というのは、どうしても存在する。
どんなに政治家や地元の住人が否定しようとも、何となく察知する不穏な空気。地元のドイツ人には
分かる訳がない。好奇の視線(少なくとも好意ではない)…そんなものはドイツ人よりも外国人の方が
よく分かっている。増幅される「異物」への感情。問題は国籍なんかじゃない。肌の色、見た目。
ひと目見ただけで、そいつは書類上はドイツ人なんてわかるもんか。
ネオナチにとってもW杯期間中は、注目を集める絶好の機会(注)。もちろん、そんな存在はごく
わずかで、自分の住む地域にそんな評判が立つのを心が痛む思いでみている人々も多い。
…ただ、あまりにもその存在が危険なだけだ。
アフリカ評議会はW杯期間中、同圏出身者が近寄らない方が良い地域や場所(主にベルリン東部と
旧東ドイツ圏)をまとめ、いわゆる"No-Go-Areas"として、近日中に公開、注意を呼びかけるつもり
だという。
それを「過剰反応だ」と一笑に付すことが出来ようか?よほどの楽天家でもない限り厳しいんじゃ
ないか?
(注):現在ネオナチがW杯期間中に計画しているデモは3件。フランクフルトでのイラン-ポルトガル
戦(6月17日)、ゲルゼンキルヒェン(6月10日)、ライプツィヒでのイラン-アンゴラ戦(詳細は未定)
イラン戦が関わっているのは、昨年アフマディネジャド大統領がホロコーストを否定する発言を
したからで、ネオナチは彼の発言を歓迎している。
(5月22日の追記)
…とまで書いたところで保存しておいたら、なんとこの週末中にまたネオナチ系と見られる人物に
よる暴力事件が発生。今度の被害者はクルド系でドイツ国籍を持つ男性、しかもPDSという左翼政党
の州議会議員だったことから更に議論はヒートアップ。
特にイメージ悪化を恐れる旧東側の各州は反論を試みようとしているものの、22日に憲法擁護庁
が発表したネオナチ系による暴力事件のデータ(※)によって、この状況を直視せざるを得なくなって
しまっている。
各新聞は英語版の旅行ガイドを引き合いに出してきては、「外国人にとって危険な場所は以前から
あった」と、そこで指摘されているベルリン内の地区を紹介している(■)。…でも何もこれは今更
始まったことじゃないし、観光客にとって行かない方が良い場所があるのも、ドイツだけじゃない
だろうと思うのだけど。
どこが外国人にとって危ないかなんて、判断を下せるのは政治家でもなく、地元民でもなく、外国人
自身の経験や本能的な勘に頼るしかない。
事前に出来る自己防衛のための知識として"No-Go-Areas"、私はアリだと思うけど(とはいえ、観光客
はともかく、そこで生活する外国人の身が危険という状況が日常なのは、さすがにマズイと思う)。
W杯開催を3週間後に控え、なんだか怪しい雲行きですが、このまま能天気なお祭り気分で本番を
迎えるよりも、ドイツにはやはりリスクがあると言うことと、外国人にとってはどこへ行くにしても危険な
場所と時間帯があることを認識しておくのは良かったのではないのか、と思ってみたり。
ちなみにベルリンで発生したネオナチ系による事件をまとめ、注意を呼びかけているサイトはこちら
(残念ながら英語はナシ)。
(※)2005年に各州で発生した、ネオナチ系による暴力事件(人口10万人あたり):太字は旧東独
4,29 ザクセン=アンハルト
3,78 ブランデンブルク
2,25 テューリンゲン
2,07 ザクセン
1,94 シュレースヴィヒ=ホルシュタイン
1,63 メクレンブルク=フォアポンメルン
1,49 ニーダーザクセン
1,42 ベルリン/ザールラント
1,36 ブレーメン
1,15 ハンブルク
0,67 ノルトライン=ウェストファーレン
0,66 バーデン=ヴュルテンベルク
0,62 バイエルン
0,59 ラインラント=プファルツ
0,41 ヘッセン
ブランデンブルク州とベルリン州は前年にくらべ微減しているものの、その他の地域では増加。
(■)ドイツ鉄道 Lichtenberg駅 / S-バーン Schöneweide駅, Ostkreuz駅 / Friedrichshain地区内、
トラムM10の停留所。これらはすべて旧東ベルリン側にあります。
ドイツの首脳陣は気楽なコメントを出しているようですが、ドイツ在住の外国人は本気で怖いですよね。。お二人も気をつけてください!
そういや以前、日本人の板前さん(ベルリン在住)が坊主頭にしてたらネオナチだと思われて困ったことになった、という話を聞いたことがあります。
Posted by: ミナガ : 27.05.06 10:10政治家のみなさんは「行っては行けない場所があることを認めたら負け」だと思っているフシもあるようですね~。まあ他の場所が安全かというと、そうでもないですものね。
確かに私も丸坊主の人を見かけるとドキッとしますが、さすがに日本人で丸坊主でネオナチっていうのは…ありえないですよね(笑)
Posted by: contra : 28.05.06 02:49
