tabula rasa

いわば、スクラップブック兼メモのようなもの。
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05.06.05

『ゾフィー・ショル―最後の日々(仮)』[鑑賞記録(映画、舞台、その他)]

一つ前のエントリーで書いた『青い棘』の後に上映されたのは『ゾフィー・ショル―
最後の日々(仮)』。
この作品はベルリン映画祭で銀熊賞を受賞したそうで(監督部門と主演女優部門)、
そのためだろうか、今回の『ドイツ映画祭2005』のオープニング作品に選ばれた。

ltzt.JPG

この作品は実話で、「白バラ抵抗運動」に携わったゾフィー・ショルを扱っている。
舞台は1943年2月、ナチス政権下のミュンヘン。ハンス・ショルと妹のゾフィー・ショル
を含めた数人の学生が、ある地下室のアトリエで懸命にビラを印刷している。
ここは学生を中心とした「白バラ運動」の活動場所。ここからドイツ各地に向けて、
反ナチのビラが発送されているのだ。
…普通の市民には到底信じられないようなドイツ軍の不利な戦況や蛮行が記され、
ナチスへの抵抗を呼びかけるビラが。

2月18日の朝、ミュンヘン大学でのビラ配布を買って出たハンスとゾフィーは、廊下や
研究室の前にビラを置いている所を管理人に見つかり、身柄を拘束されてしまう。
二人は別々の部屋で、国家秘密警察(シュタージ)の取り調べを受けることになる。
モーア審問官を前にして、当初は自分にかけられた容疑を否定するゾフィーだったが、
兄・ハンスが自白したと知るや否や、彼女は自分が「白バラ」の一員であることを認め、
他のメンバーを守り抜こうとモーア審問官に食い下がる。

ナチを批判し、法を侮辱する彼女に共感は出来ないが、モーアはゾフィーの堂々と
信念を語る姿に何かを感じ、彼女の罪を軽減すべく取引をもちかける。
…しかしその申し出をも、ゾフィーは毅然として拒否する。

ゲシュタポで囚人となったゾフィーの心を暖めるのは同室のエルゼ。彼女に婚約者の
事を語りながら眠りにつくゾフィー。神と良心に従う生き方を理想とし信念としながら、
自らの立場を貫き続ける彼女だったが、ベッドの中では、神に向かって祈らずには
おれない。…神さま、どうかお守り下さい、と。
残る希望は公開裁判で自分の、そして「白バラ運動」の信念を聴衆に向かって
語ることのみだった。そうすれば、きっと学生達は立ち上がってくれる…。

2月22日、ゾフィーとハンス、そして仲間のクリストフの姿が人民法廷にあった。
公開裁判とは名ばかりで、被告人以外はすべてナチの制服を着ている。将校たちだ。
ヒトラーから最高判事に任命されていたフライスラーがベルリンから呼ばれ、3人は
「国家反逆罪、国防意欲喪失に手を貸し、利敵行為を行った」という罪状で起訴された。
…裁判の行方は始める前から決まっていた。3人は死刑を言い渡される。執行猶予なし。

家族との面会を果たし、ハンスとクリストフに別れを告げ、彼女はギロチン台へと消えた。

…その後、他の白バラのメンバーも逮捕され、処刑されるか収容所送りとなった。
ちなみに「白バラ」の作ったビラは、ノルウェーからイギリスを経て、イギリス空軍によって
ミュンヘン上空にばら撒かれたという。

話はゾフィーが身柄を拘束されてからギロチン台に消えるまでの5日間を追っているので、
『白バラ運動』について全く知らない人が見たら多少戸惑うかも知れない(とはいえ日本で
公開されたら、観に来るのはやはり興味をもっている人が主だろうから大丈夫?!)。
また、こういったドイツ・ナチス時代のものは日本人結構好きだし、反ナチスに倒れた
人々の話なんかも散々見たり聞いたりする機会も多いだろう。
どっかで同じようなものを見たような感じがして、イマイチ・・・と言う人もいるかもしれない。
それでも私は、時間があれば是非観て欲しいと思う。

特にゾフィーがモーア審問官の取調べを受ける場面は、法を秩序を重んじるモーアと
神と良心に基づいた生き方を理想とするゾフィーのやり取りに、印象深い台詞が
ちりばめられている。
このやりとりを観ていて、頭の片隅に浮かんだのはなぜか立川ビラ配布事件だった
(とはいえ実はあんまり詳しいことしらんのですがね)。
今の日本は確かに「平和」かもしれない。けれども「自由」な国なんだろうか?確かに皆が
みんな自分の自由を主張しはじめるとキリがない。でも法や秩序はいつまで私達を守り
いつから私達を迫害するようになるのだろうか?

…そんなことを頭がかすめ、「法は変わっても、心は変わらない」という台詞が印象に残った。

ラストが近づくにつれ、場内のあちこちで泣いている様子が伺えた。
ベルリンでもすすり泣きが会場を満たしたと言うけれど、それは決して大げさではなかった。

上映後の挨拶で監督が語っていたが、今回の作品の製作過程で、過去の資料とは徹底して
向き合ったとの事。おかげで新事実が続々らしい。
東ドイツ崩壊後に公開された資料に混じっていたのを探し出し、当時の天気を調べ、
ゾフィーとゲシュタポの牢屋で同室だった女性が遺族に送った手紙をあたり、生存する
関係者にも丁寧なインタビュー調査を行った。

ロケ地も史実に忠実で、ビラ配布の舞台となったミュンヘン大学、ハンスとゾフィーの住居、
また住居から大学へと向かう道や裁判が行われた場所などはすべて現存し、そこで撮影を
行ったそうだ。
また裁判のシーンは、ナチスがプロパガンダ用に撮影したものの、あまりにも怖い印象を
大衆に与えるため使用しなかったという映像を発掘し、大きな発見になったそうだ。ドイツ
市民ですら、本当にそんな裁判が行われていたとは知らず、衝撃を受けたらしい。

おまけにラストで3人を処刑したギロチンも、ウィーンにある本物を運んできて撮影に使用
したと聞いて、びっくり。だって、過去に何千人もの首を切ってるんやで…(画面の端に
何か写ってなかったやろね?!)。

それからも監督は熱く語ってくれた。
監督のおばあさんはアマチュアのスポーツ選手だった。オリンピックに出たい一心で、
国家(ナチス)の援助が欲しくて、「ハイル・ヒトラー!」と言っていた…。
彼女は決して犯罪者や殺人者ではない。ナチスに対して確信的ではないが、結果として
協力者だったのだ。ゾフィーのように声をあげる勇気がなかっただけなのだ、と。
もちろんおばあさん自体は良いひとで、監督自身も大好きだった。

モーアだってそうだ。昔の世なら、自分が警察の審問官になれるなんてありえない。
自分を守ってくれる国なのに(そしてかれはそう信じている)、それに守られていながら
「ノー!」というのか?…とゾフィーに問いかける。

監督自身が戦後生まれなので、ナチの戦争責任に対しては直接には感じにくい(ようだ)。
しかし、ゾフィーのような人がいたことは語りつがれなくてはならない、その責任はあると
語っていた。
2006年の春ごろには日本でも公開されるとの事。

※文中の写真はドイツ語版公式サイトからお借りしました。

投稿者 contra : 05.06.05 22:26
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